嘘ゲー:rushtetsu

 ・番外編(ネタバレ注意)「ワッフル久萬太郎のスーパーリアルクエストイベントガイド」 

 ・0「購入記」   ・1「プレイ初日」  ・2「脱出」  ・3「運び屋」  ・4「リアルファイト」  ・5「戦士CAN-DO」
 ・6「刺客」  ・7「はてなダイアリー」  ・8「リアルプレイヤー」  ・9「チーマー・ゴロウ」  ・10「ミルク刑事」
 ・11「TVニュース」  ・12「CAN-DO来る」  ・13「占い師」  ・14「天才ゾンビ」  ・15「作戦会議」 ・16「ゾンビ100人組手」

2004-05-19

[]-スーパーリアルクエスト- その13「占い師」

予想したとおりの事態を前にして、俺は自分が言うであろうと予想したとおりのセリフを店員のおっさんに向かって吐いていた。

「これは・・・冷凍庫だよね」

「またまたー。お客さん、ご自分で冷凍庫っていったじゃあないですかッ。単身用ならこの冷蔵庫の冷凍庫がベストだよッ。冷凍庫が広めのサイズなんで、パンとかご飯とかなんでも色々冷凍しておけますよッ」

首領キホーテの店員は、相変わらずの軽い語り口だった。

「いや、冷蔵庫は間に合ってるんだ」

「すると、冷凍庫だけ欲しいんですか?別売りはできないんですよ」

「冷凍庫のレイは幽霊の霊なんだ。ある人物の霊が封印された入れ物を霊凍庫というらしい」

幽霊・・・ですと?」

店員の顔色が変わった。何か心当たりでもあるのだろうか。

「私は・・・幽霊が苦手でしてね。趣味で写真をたしなむんですが、たまに私が撮った写真にその・・・幽霊が写っていることがあるんですよ」

このおっさんの趣味は盗撮だ。おっさんの撮った写真が心霊写真になっているということか。

「詳しい人に見て貰ったんですが、どうやら霊感の強い人が撮る写真にだけ写ることがあるそうなんですよ。私は普段は霊感なんぞ分からんのですが、写真にはこだわってるんで、映ってしまうのかなあと。最初は怖くてすぐ捨てていたんですが、そのうち写っている霊に興味を持ち出しまして、どんな霊なのかを専門家に鑑定して貰っているんですよ」

店員はポケットから写真を何枚か取り出してそのうちの一枚を俺に見せた。

明らかに盗撮写真だ。スカートの丈を短くした制服姿の女子高生の生足が映っている。角度的に下から撮ったものではなく、下着は写っていない。おそらく場所は駅の地下通路で、前を歩く女子高生を怪しまれないように撮ったものだろう。健康的な足だが、そこは見るべきところではない。薄暗い通路の脇の狭い空間に何かが写っている。

「壁のところをよく見てみてください」

壁際に一見浮浪者が座っているのかと思ったがそうではなく、壁から奇妙な首が突き出ていた。顔の形が歪んでいて、目が肥大化している。明らかに生きている人間の顔ではない。飛び出しそうな眼球は、女子高生を凝視しているようにも見える。この盗撮おっさんと同じような趣味を持った男の幽霊なのだろうか。波長が合うから写真に写るのかもしれないな。

「それも鑑定してもらったんですが、人が大勢集まる駅のような場所には、何かを訴えたい幽霊が地縛霊となって居座る例がよくあるらしいです。その幽霊は、その駅の階段で足を滑らせて頭を打って亡くなった男のものだそうで。その悔しさから成仏できずに、未練とともに地縛霊となってしまったのでしょう」

うさんくさい話だが、霊凍庫というおかしなものが存在する世界のことだ。心霊写真の存在くらいは信じてやってもいいだろう。しかし事故で命を失った悔しさで地縛霊になったのか、それとも単なるスケベ心で通学途中の女子高生を見るために地縛霊になったのかが気になるところではある。何にしても成仏できないのは、不幸なことなのだろう。男の幽霊の表情には苦悶の色も感じられる。

写真を鑑定した人物について聞いてみた。

ギボアーノ安堂先生なら、夜のシプヤで占いの仕事もしているからすぐに会えると思いますよ。シチ公のある広場に10時頃行ってみるといいです」


首領キホーテを出て、夜までハンター街でバトルをこなして時間をつぶして過ごした。レベルは11になった。シプヤの不良どもはもはやザコである。たまに暴力団をぶちのめした後にゾンビが出てくるようになったが、一体しか出ないので、ボコられる心配もなく難易度の高い技をぶつけてヒットアンドアウェイで戦えば勝てる相手である。ゾンビは不良どもと違って倒しても金やアイテムを落とさないが、得られる経験値はなかなかのものだ。

ちなみに、ハンター街の不良達を倒して得たアイテムで、そこそこの装備にはなってきていると思う。とはいえファンタジーもののRPGではないので、剣やら盾やらを落とすわけではなく、落とすアイテムもごく僅かなものなのだが、少ない種類ながらもこだわるべきポイントがあるのだ。

俺が何週間もの間、メインの武器にしている鉄パイプだが、ずっと同じモノを使っているわけではない。攻撃力や耐久力が高いものに入れ替えていっているのだ。この辺りのことは、DIABLOをやり込んだ俺にしてみれば心得たものだ。単なる鉄パイプと侮るなかれ、あらゆる武器には質による基本攻撃力以外にも「装備品のランク」という称号ランクが存在し、ランクの高いものは低いものの攻撃力の何倍もの攻撃力を誇るのだ。

愛用の鉄パイプは基本攻撃力40~60の中でも55を誇るが、「修羅場を越えた」という称号が付いていて、攻撃力にプラス修正が付くため、実際の攻撃力は相当なものである。この上のランクも当然存在すると思われるので、それを手に入れるためにはさらなる戦いを経験しなくてはならないだろう。

なお、戦いに入る前に武器を設定するようになっているので、素手や指サックだけで戦いたい場合は外すことができる。敵によって武器を変えるのは基本だ。ゾンビには鉄パイプによる距離をおいた戦いが有効だが、不良はナイフを持っていることが多いので、より機敏なフットワークができる指サックのみのほうが、有効な打撃技をくらわせることができたりする。鉄パイプを振り降ろしてナイフをたたき落とそうとしても、相手の動きが素早いので簡単にはできない。それよりも、相手がナイフをつきだしてくるタイミングに合わせて、避けると同時にカウンターで打撃を入れる戦法の方が確実なのである。鉄パイプの扱いが難しい理由として、技の入力コマンドが素手の技よりも複雑で、入力に時間がかかるということがある。ボタンの入力がひとつやふたつ多いだけで、その間に攻撃をくらってしまっては元も子もない。攻撃力が高い武器ほど、入力コマンドは複雑になっていくようだ。


22時のシチ交の前広場は、帰宅する人々で溢れていた。いくつか並ぶ露店を見回すと、彼女はすぐに見つかった。顔を隠すようにフードをかぶり、小さなテーブルの上にほんのりと淡い光を放つランプを置いて独特の雰囲気を作り出している。

俺は静かに近づいていった。脇の小さなついたてに「霊感占い ギボアーノ安堂」と書いてあるので、彼女で間違いはないようだ。

「そなたの行くべき道を占いましょうぞ」

彼女は顔を上げずに言った。俺は椅子に腰掛けて彼女の顔をのぞき込んだ。どうやら相当歳をとっている様子だ。声もしわがれているし、老婆といっても差し支えないだろう。

「むぅ・・・そなたの背後にはたくさんの霊が見えますぞぇ。これは珍しい。これほどの数が集まっているのは始めてじゃ」

ギボアーノは私を一瞥しただけで、後は目を閉じてうつむいたままで言った。目をつむって霊が見えるのだろうか。

「しかし、安心なされい。そなたに恨みを持つような悪い霊はおらんですじゃ。むしろそなたを応援しようとする意志が感じられる。そなたに何かを期待しておるようじゃな」

「私に何を期待するといういうのでしょう」

俺はとぼけたように答えた。

「そなた・・・何か強大な力と戦っておるな。その霊たちは皆、このシプヤの街で亡くなったものたちじゃ。・・・その強大な力によって殺されたものたちじゃな。そなたがその強大な力を倒せば、霊達は成仏できるじゃろう。そなたの行くべき道は・・・ズバリ!」

ギボアーノはいきなり顔を近づけて、目を見開いた。三白眼の大きな目が俺を見据える。俺の呼吸が止まった。

「協力してくれる仲間達の力を借りて、強大な力を倒すことじゃ」

そう言って、口の両端をつり上げて、満面の笑みを浮かべた。

霊凍庫のことを言い出すタイミングを伺っていた俺は、早速口を開こうとしたが、その前にさえぎられた。

「むぅ!待たれい。何も言うなや。・・・そなた。わしに会うことで未来が開けていくようじゃな。ふぅむ。わしはつまらぬ占いをしただけじゃが・・・」

「そのことでお話があります」

「待たれい!何も言うなや・・・。ふぅむ。分かったぞよ。わしの持つ大切なものをそなたは必要としておるな?」

「ええ。よく分かりましたね」

「となると、あれしかないぞなもし。しかしあれは簡単に人には渡せないもの・・・」

「そこをなんとかお願いします。私には絶対に必要なものなのです!」

俺の真剣な表情が伝わったのか、彼女はすぐにおれた。

「よかろう。だが貸すだけじゃぞ。明日持ってくるから、また明日の22時にここにくるがよい」

「ありがとうございます。ところで、綾尋千里とはどのようなご関係で?」

老婆は、口を呆けたようにあけて俺の顔をまじまじと見つめた。

「あぁ~?わしの宝とそれとどういう関係があるのじゃ?」

綾尋千里の霊が封印された冷凍庫を貸していただけるんですよね」

「んが。あ~あっちか・・・。なるほどのう。ほうほう、なるほどうなるほどう。わしゃあてっきり宝物のジャミーズの瀧&椿のサイン入り色紙の方かと思っておったわい。うひゃひゃひゃひゃ」

豪快に笑った老婆の唾液が俺の顔面にかかった。そんなものでどうやって敵と戦うのかと言いたいが、突っ込むのもばからしい。だが、老婆の顔はすぐに極めて真剣なものに戻っていた。

綾尋千里はわしにとって娘も同然の存在じゃった・・・。もちろん何の血のつながりもないし、頻繁に会っていたというほどでもない。ただの友達じゃ。だが彼女は両親を早くに亡くし、わしは子供がいない身。そして彼女はイタコという職を持ち、超人的な霊能力を持っておった。わしの霊能力など彼女の足元にも及ばん。わしは霊の存在を確認し、意志をくみ取るのがせいぜいで、彼らと会話を交わしたり力を具現化することなどはできんからな。だが、数少ない霊能力者同士惹かれ合うものがあった。わしはなんでも彼女の相談にのったし、彼女もまたわしに甘えてくれた。しばらく会っていなかったある日のこと、千里は変わり果てた姿でわしの元へ送られてきたんじゃ」

それが霊凍庫というわけか。

千里は何に関わっていたのかわしに言わんかったし、死因さえも言わんかった。その箱はわしの前でも開くことはなかったんじゃ。ただ、千里はわしに語りかけてきた。この箱を必要とする勇者が現れた時に渡してくれとな。今にして思えば、そなたが戦っている相手に千里も殺されたんじゃろうな・・・。おそらく全ては秘密の行動だったのじゃろう。無力なわしにそれを告げなかったのは当然じゃ。じゃが、わしに箱を託してくれたことは本当に嬉しいんじゃ。千里にとって、わしが一番信頼できる人物だったということじゃからな・・・」

ギボアーノの大きな瞳は潤んでいた。

「あれをここに持ってきて手渡すことはやめたほうがいいじゃろう。あれは貸金庫に保管してあるんじゃ。明日わしがそのカギを渡そう」

ギボアーノは貸金庫の場所を教えてくれた。

「今日はもう疲れて占いをする気分じゃないから、帰るとするよ・・・。あ、今回の料金は箱のレンタル代も含めて2万R.だよ」