嘘ゲー:rushtetsu

 ・番外編(ネタバレ注意)「ワッフル久萬太郎のスーパーリアルクエストイベントガイド」 

 ・0「購入記」   ・1「プレイ初日」  ・2「脱出」  ・3「運び屋」  ・4「リアルファイト」  ・5「戦士CAN-DO」
 ・6「刺客」  ・7「はてなダイアリー」  ・8「リアルプレイヤー」  ・9「チーマー・ゴロウ」  ・10「ミルク刑事」
 ・11「TVニュース」  ・12「CAN-DO来る」  ・13「占い師」  ・14「天才ゾンビ」  ・15「作戦会議」 ・16「ゾンビ100人組手」

2004-05-01

[]-スーパーリアルクエスト- その6「刺客」

寝苦しい夜だった。

ベッドの上で寝る記憶・・・。白い天井が記憶に新しいあの病室以来だ。

自分の部屋のベッドで寝た記憶は封印されたままである。

ここは金田真奈芽の家だ。1LDKの賃貸マンションで、去年から一人暮らしをしているらしい。彼女は普通のOLだが、金を貯めて頭金はなんとか払えたらしい。ボロアパートで暮らしていたという金田満は、都内の小綺麗なマンションに目を丸くしていた。車椅子生活になってからは、しばらくはここで世話になることにしたらしい。金田も仲間として戦うのであれば、真奈芽の存在は不可欠だろう。彼女が車椅子を操り、金田の行動をサポートしてはじめて戦闘要員たりうるのではないだろうか。

2週間ずっと、硬いコンクリート床に毛布を敷いて寝ていた俺にとって、スプリングの効いた柔らかいベッドは天国のはずなのだが、いざ眠るとなると、なかなか寝付けないのだ。

ゴロゴロと寝返りを打ち続けていると・・・。

窓のカーテンの向こう側に、人の形をした影が浮かび上がっていた。

そいつは手をめいっぱい広げて、窓の枠ににしがみつくようにしている。

カーテンの隙間からのぞく凶悪な視線と俺の視線がぶつかった。

「あッ!」

と叫んで飛び上がると、ヤツは思い切り窓をぶち割って、中に飛び込んできた。

「ウキャキャキャキョオオオーーーッ!」

正気を失った横顔が、月の光の中に浮かび上がる。

「むぅうっ!もうこの場所をかぎつけるとは!獨讀存美の仲間だな!」

「ソウともヨ!一度仲間になっておきなガラ、ヨクもうらぎっタナ!」

「貴様・・・。ゾンビか?」

俺は金田達が気づいて飛んでくるまで、戦闘を引き延ばそうとできる限る会話を試みることにした。

「ウシャシャシャシャー。オレはシプヤゾンビでもハチホンギゾンビでもないぞぉ~。ましてや腐りきった死体でもなければ腐りはじめた死体でもナイ。かといってマミーでもなければ包帯男でもないぞぉ~~~。さぁ~て、あててミナ~ヨゥ?ウヒィッ」

「うーむ。そうか、ゾンビじゃないのか。見かけはそっくりなんだけどなー。あー、でもむしろ見かけはマミーか?いや、マミーを見たことはないんだけど、マミーって包帯に包まれてるって印象だし。お前も包帯だらけだしなあ」

「バーカ。よーく見ろヨ。包帯はオレの体の40%程度しか包んでいないゼ。ゾンビとかマミーとかいうヨリむしろ腐りきった死体に似てるだロ?さ~て、そろそろわっかるカナ?ホヒェッ」

「うーーーむ。・・・あっ、お前、そんなこといって、実は腐りきった死体なんだろ?オレをだまそうったってそうはいかないぞ?」

「バッカヤロウ!オレがオマエをだまして何になる!ゾンビ族ウソつかない!一度死んだ身だ。いまさらウソなんてつかねーヨ!」

まくしたてた勢いで、モンスターの眼球が飛び出した。ヤツはあわててそれを眼窩に押し込んだ。

「オットット。これでも一応視力はあるんダ。ちゃんとハイッテないと見づらいったらありゃしない」

「うーん、死体かー。死体・・・屍・・・」

「アッ・・・。オシイ!近づいてキタ!」

「生ける屍だろ」

俺の声ではなかった。部屋の入り口に車椅子に乗った金田がいた。もちろん車椅子を押しているのは妹である。

「セイカイーーーッ!!!ってイウカ、お前いつの間に仲間をよびやがった!」

「どうでもいいけど、臭いから早く出て行ってくれないかしら」

「アッ!クサイだと!俺が一番気にしてることヲ!」

よくしゃべる屍だ。俺は戦闘の構えに入った。

「テツ!気をつけろよ!生ける屍は腐りきった死体より強いモンスターだ!」

「屍カカト落とし!」

生ける屍の足が振り上げられたかと思うと、俺の肩にカカトが直撃した。

「くせぇっ!」

強烈な腐臭が俺を襲う。俺は吐きそうになった。

「チッ。外したかッ。もうイッチョ!セイッ!」

こいつは死ぬ前は空手家だったのか?するどい蹴りだ。狭い部屋では避けることすらままならない。次の一撃は俺の顔面に直撃した。ヤツの腐った体の一部が俺の顔面に付着する。

「体が破壊されることはワレラにとって恐怖ではないノダ。脳さえ生きていれば、またマーモット博士に体を付けて貰えるからナ」

そう言って、今度は素早いパンチを繰り出し始めた。

「ワンツーワンツー。ゾンッ!ゾンッ!」

本場のゾンビパンチだ。俺のとはキレが違う。

やつのゾンビパンチは徐々に俺の顔面にヒットしはじめた。真奈芽が「右っ!左っ!」とか言ってるが、んな言葉はこのパンチのスピードの前には意味がない。

「ビーーーッ!」

俺の頬が切れて鮮血が吹き出した。

強烈なストレートだ。

「いくゾ!ゾンビ百烈パンチ!ゾンゾンゾンゾンゾンゾンゾンゾンゾン!」

目にもとまらぬジャブを避けるのが精一杯だ。反撃ができる隙がまったくない。

「ビーーーーーーーッ!!!」

いかん!右ストレートを避けた直後に、左フックが飛んできた!最初からこっちを狙っていたのだ!

フックは俺の鼻柱に斜めからえぐるように直撃し、俺は吹っ飛び壁に激突した。

「・・・あれ?そんなに痛くないな」

「バカ!テツ!俺が止めたんだよ!お前は寸止めのパンチの勢いで飛んだだけだ!」

金田が叫んでいた。

「とかいってるうちにヤツが動き出しちまうから、はやくしとめろ!」

「お、おうっ」

オンドゥルルラギッタンディスカー!!!」

生ける屍が何かを必死に叫んでいる。

オンドゥルルラギッタンディスカー!!!!!」

「ん、何を言ってるんだ?やられる前から断末魔の叫びか?」

「んなことどうでもいいからはやくしろ!もうこれ以上止めていられない!」

なぜか心をかき乱されるような気持ちがしたのだが、ここはとどめを刺すところだ。

俺は大きく息を吸い込んだ。

「必殺!屍ローリングサンダー!!!」

左足を軸にして、一回転して右足のカカトを相手のみぞおちに直撃させる。要するに後ろ回し蹴りだ。

「アッ!それオレの必殺技!どうシテッ!?」

生ける屍はそう叫びながら窓の向こう側に吹っ飛んでいった。

ここは7階だ。この高さから落ちたらモンスターとてひとたまりもないだろう。

脳も破壊されているはずだ。

しかし、なぜか俺の心は少々動揺していた。生ける屍が最後に叫んでいた妙な言葉が心に引っかかっているのだろうか。俺としたことがどうしたというのか。勝負はついた。忘れることにしよう。

「どうやら、テツはモンスターの技を盗んで使える能力を持っているらしいな」

金田にそう言われて、始めて気がついた。

「そうらしい。この技は、俺が部下をやらされている時に身につけたんだ。ゾンビ族どもに色々な技をかけられていじめられたもんでな。他にもいくつか覚えているよ」

「災い転じて福となすというところかしら?」

金田真奈芽の言葉に俺は笑みを返した。

「フッ。そんなところだろうな」

「ところで修理代はしっかり払ってもらいますからね」

「・・・・・・」