嘘ゲー:rushtetsu

 ・番外編(ネタバレ注意)「ワッフル久萬太郎のスーパーリアルクエストイベントガイド」 

 ・0「購入記」   ・1「プレイ初日」  ・2「脱出」  ・3「運び屋」  ・4「リアルファイト」  ・5「戦士CAN-DO」
 ・6「刺客」  ・7「はてなダイアリー」  ・8「リアルプレイヤー」  ・9「チーマー・ゴロウ」  ・10「ミルク刑事」
 ・11「TVニュース」  ・12「CAN-DO来る」  ・13「占い師」  ・14「天才ゾンビ」  ・15「作戦会議」 ・16「ゾンビ100人組手」

2004-04-28

[]-スーパーリアルクエスト- その4「リアルファイト」

俺は装備を整えた。

レベルは相変わらず2のままだが、HPは155。防御力も攻撃力もなかなかのものだ。

色々な店をまわってみたが、分かりやすい武器屋や防具屋などというものは見つからなかった。もっともここは普通の街のシプヤであり、ファンタジーの世界という設定ではないのだから当然といえば当然だろうが。

仕方がないので、南急ハンズで戦闘に使えそうなものを揃えたのだ。

ハンマーが1500R.。鉄製で、岩でも壊せそうなくらい硬くて大きめのやつだ。普段工具箱にいれておくようなトンカチよりひと回り大きい。かつてDIABLOで、ゾンビなどの死体系をハンマーでガツガツ壊していたことを思い出したのだ。これで脳天をぶっ壊してやるぜ。

予備の武器として、チェーンソー。肩から提げておくことにする。こいつは一番安いやつを選んだのだが30000R.した。

防具がなかなか見つからなくて苦労した。スポーツ用品の専用店に行って、野球のキャッチャー用のプロテクターを20000R.で、剣道の面を15000R.、空手などでつかうファウルカップを2000R.、腕、拳、足のすね、甲などを防具する空手用のサポーターを2500R.、空手着が15000R.合計86000R.の支出だ。

時は満ちた。勝負の時が来たのだ。

場所は某ビルの屋上。

俺は、金田と獨讀存美と金田とのやり取りを隠れてこっそりと見ていた。

金田とはすでに打ち合わせ済みだ。死体を5体運んだことで、妹を金田に返すなら今回は戦うつもりはない。だが、相手は非情なモンスターだ。戦うハメになる確率のほうが高いに決まっている。ここまでセーブできなかったことだけが心残りだが、もうやるしかない。これだけ苦労して装備品を揃えたのだ。絶対に勝てるはずだ。苦労は報われるものだ。

「これで5体運んだぞ。妹はどこだ」

「おや~?今日はずいぶんと態度がでかいねえ。疲れてるだろう。今日はおうちに帰ってゆっくり休んだらどうだい?」

獨讀存美は遠目に見ると、白装束を着た女という外見だが、よく見ると白い仮面を被っていて、長髪が腰まで伸びており、肌を露出している部分が全くない。

「ふざけるな。妹を返せ!」

「・・・ほう。どうやら本気のようだね」

俺は身構えた。

獨讀存美が手を振ると、部下のモンスターが出て行って、一人の女の子を連れてきた。

両手が縛られており、顔を見ると20代前半、色白でやや童顔、なかなかかわいらしい顔立ちだ。

「兄さん!満(まん)兄さん!」

「真奈芽(まなめ)!真奈芽ー!!!」

しかし、妹の縄がほどかれる様子はない。

「真奈芽を解放しろ!」

「兄さん!逃げて!こいつらは私を逃がすつもりはないわ!私のことはいいから早く逃げて!」

金田がチラリを俺の方を見る。俺は出る機会を伺っていた。まだ出るのは早い。

「そうさ。このあたしがそう易々とお前らを解放するとでも思ったのかい?かわいい妹を返して欲しかったら、力ずくで奪ってみな。・・・とはいえ、お前は非力な屑人間。あたしと戦えとは言わないよ。あたしの部下に勝ったら、根性を認めて妹を帰してやるよ。ほら、肉塊君出番だよっ!」

「ブシュルルルル・・・」

肉の塊が現れた。真・女神転生のレギオンに似ているが、こっちは地面を這っている。あまりのグロテスクさに俺はその場を逃げ出したくなった。しかし今出ないと、金田はあっさり殺られてしまうだろう。

「待ったぁー!俺と勝負だ!」

「だ、誰だ!」

俺は重装備で飛び出した。

しばらく沈黙がその場を征した。屋上に冷たい風が吹く。

沈黙を破ったのは、獨讀存美の濁った笑い声だった。

「ブ・・・ブヒャヒャヒャヒャヒャブヒャラブヒャラ・・・ヒーヒー」

「何がおかしい!」

「な、何がって・・・あんたが何もんかはしらないけどさ。なんだい、そのアホ丸出しの格好は。遊びに来たのか、戦いにきたのかどっちだい」

アホ丸出しだと?どこがだ。各種サポーターの上に、空手着。そして剣道用の面、キャッチャー用のプロテクター。首からはチェーンソーをぶら下げ、手にはハンマーだ。完璧な武装じゃないか。

「問答無用!その腐った口を黙らせてやるぜ!」

しかし、戦闘画面に切り替わる様子がない。相手から襲いかかってくる様子もない。

うーむ。これだけ完璧にできているフルポリゴンの描写だ。ここはおそらくフルポリゴンのまま自然に3Dバトルを行うのではないだろうか。もっともその方が俺にとってはやりやすい。プレイヤーの腕次第で戦況が変えられるなら、願ったりだ。俺の腕をなめるなよ!

俺は肉塊に飛びかかった。

「テツ!俺も戦うぜ!」

俺は答え代わりにハンマーを金田に放り投げた。金田はそれをつかんで、俺と同時に肉塊に突進した。

金田のハンマーが肉塊にめり込む。おそらくたいしたダメージではないだろう。

俺は、力強くうなるチェーンソーを、肉塊にあてがった。

バシュルルルルル

嫌な音がして、血が周囲に飛び散る。俺も思いきり返り血を浴びた。

肉塊はあっさりと真っ二つになって、贓物をぶちまけて動かなくなった。スプラッターは趣味じゃない。あ、でもゲーム購入時のテストでホラー映画が好きだと書いたのが影響しているかもしれんな。

「見かけによらず、なかなかやるじゃないさ。じゃあこれはどうだい?ばくだんいし!出番だよ!」

人間の頭部ほどの大きさの石が宙に浮いていて、すごい勢いで俺に向かってきた。なんとかその攻撃をかわしたが、ブーメランのように戻ってきて、危うく後頭部をやられるところだった。すごいスピードだ。

よく見ると、石に小さな目と口があって、さながら飛ぶ頭、フライングヘッドだ。

「フライングヘッドめ」

俺のつぶやきを聞いた獨讀存美が反応した。

「違うよ。こいつはばくだんいしだよ。フライングヘッドはこいつと似ているけど、色がもっと黒くてね。まあ要するに、フライングヘッドは同じ系統の更に強いモンスターなのさ」

俺の命名が的中するとは、安易なネーミングセンスだ。とある地下組織もひねりが足りんな。

しまった!ばくだんいしは金田のほうに飛んでいった。

金田は両手で構えたハンマーでその攻撃を受け止めたが、あまりの衝撃にハンマーを落とした。

「て、手がしびれた・・・」

まずい。チェーンソーではあいつに傷をつけられない。逆に刃が欠けてしまうだろう。

ばくだんいしが再び金田に襲いかかる。俺にはどうすることもできない。

ばくだんいしは、避けようとして横を向いた金田の側頭部に直撃し、金田は一撃で体ごと後ろに吹っ飛び、倒れて動かなくなった。金田の妹の悲鳴が聞こえた。

俺は落ちたハンマーを拾い上げた。ばくだんいしが俺に襲いかかる。

「ギャアアアアアアア」

悲鳴はばくだんいしのものだ。俺はハンマーを後ろ向きにして、尖った部分をヤツの目に突き刺したのだ。ばくだんいしがブルブルと震えだした。

これは・・・くるぞ!

ばくだんいしを放り投げた。そして、獨讀存美の足元に落ちると同時に爆発した。

やった!レベルが・・・あれ、上がらない。獨讀存美とばくだんいしは粉々に吹き飛んだのに。

「コングラチエーション」

煙の向こうから拍手をしながら現れたのは獨讀存美だった。

「あれは、あたしの影武者の「腐りきった死体」だよ。お前の実力がそこで死んでる屑人間の金田とたいして変わらないことが分かったよ。目障りだからとっとと死にな」

俺は何も言わずにハンマーを手にヤツに向かって突進した。つべこべ言わさずに実力勝負だ。

ガキーン

ハンマーがはじかれる。しかしはじいたのは獨讀存美ではない。

またグロテスクな化け物が目の前に立ちはだかっていた。

「やっちまいな!キメラ!」

体は猛獣。首は二つ。片方は人間の頭で、もう片方は鳥の頭だ。鳥のくちばしがハンマーをはじいたのだ。レ、レベル2で勝てる相手じゃないんじゃないのか?俺は直感でそう感じた。

ヤツは俺に覆い被さってきて、俺はそのあまりの圧力にあっさりと押しつぶされた。数百キロはあるであろうその全体重を俺に預けたまま、するどいくちばしが俺の顔面を襲う。

しばらくは剣道の面で攻撃を防げたが、俺には攻撃のすべがない。ここから脱出することもできそうにない。

死体顔の人間の首のほうが伸びてきて、剣道の面にかみついたかと思うと、すっぽりとそれを外されてしまった。

もうダメだ。

凶悪なくちばしが俺を襲う。金田の妹の悲鳴が聞こえる。

俺の右目はえぐられ・・・。

「待ちな、キメラ

獨讀存美の命令で、キメラの動きが止まった。

「このまま殺してもいいんだけど、あんたの負けはもう決まった。

どうだい。あのとおり元部下の金田も死んじまったし、お前があたしの部下になるっていうなら命だけは助けてやってもいいよ。小娘も解放してあげよう」

「・・・・・・お願いします・・・」

「あぁ~?よく聞こえないよ、大きな声ではっきりいわないと殺すよ!」

「・・・お願いします・・・部下に・・・」

キメラ

「お願いします!私を獨讀存美様の部下にしてください!

「よーし、いいだろう」

獨讀存美は満足げにうなずくと、妹を解放した。

金田の妹は、嗚咽しながら金田の死体に駆け寄った。

「妹さん・・・もたもたしてると殺されるぞ。あそこに俺の大きなリュックサックがあるから、あれにお兄さんを入れて早く逃げるんだ・・・」

兄の死体を入れたリュックを背負って、よちよちと歩いてその場を去っていく妹の後ろ姿を見ながら、俺の目は涙に濡れていた。

もしかして・・・クソゲーじゃないのか?