嘘ゲー:rushtetsu

 ・番外編(ネタバレ注意)「ワッフル久萬太郎のスーパーリアルクエストイベントガイド」 

 ・0「購入記」   ・1「プレイ初日」  ・2「脱出」  ・3「運び屋」  ・4「リアルファイト」  ・5「戦士CAN-DO」
 ・6「刺客」  ・7「はてなダイアリー」  ・8「リアルプレイヤー」  ・9「チーマー・ゴロウ」  ・10「ミルク刑事」
 ・11「TVニュース」  ・12「CAN-DO来る」  ・13「占い師」  ・14「天才ゾンビ」  ・15「作戦会議」 ・16「ゾンビ100人組手」

2004-04-27

[]-スーパーリアルクエスト- その3「運び屋」

今日はディスク2をプレイしている。病院を出たら2枚目を入れてくれという表示が出たのだ。病院だけで一枚使い切ってしまうとは、贅沢な使い方だ。しかし病院内は隅々まで調査したから未練はない。取り残したアイテムはないはずだ。ただ一部の患者や医者にしか話しかけてないから、あるいは聞き逃した情報があったかもしれない。でも夜はみんな寝てたからな。

ビビアンとは病院で別れた。別行動で調査をするという。

ゲームなら次に何をすればいいのか必ず手がかりをくれるはずである。案の定、ビビアンは別れ際に一言だけ言った。「リックを探せ」と。

しかし、病院を出たらそこは大都会だった。ビルが立ち並び、商店街があり、大勢の人が歩いている。だが所詮ポリゴンゲームである。非常にリアルにできてはいるが、小さな町だ。試しに町全体を散歩してみたら1時間で一周できた。シェンムーを10倍にしたようなものだろう。さて、聞き込み調査に入るとするか。

試しに通行人に話しかけてみたら、「リックについて聞く」という選択肢が増えていた。増えていたというか、それしか選択肢がない。まあ、色々あっても面倒なだけだが。

手当たり次第にリックについて聞いてみた。しかし、どの答えも要約すると「知りません」ばかりだ。50人くらいに聞いて、俺は疲れた。やり方が間違っているのかもしれない。

しかし手がかりはひとつしかない。俺にできることは、「リックについて聞く」だけなのだ。俺は気晴らしにディスカウントショップに入ってみた。首領キホーテという店だ。

所持金は500リアルしかない。リアルの貨幣価値はよく分からないが、店の商品を見る限りではどうやら円と同等といったところだろう。

「いらっしゃいませーッ」

エプロンをつけたおっさんが声をかけてきた。ちなみに声はほとんどが本物の録音された声である。字幕はない。まあ、聞き逃しても重要なセリフの場合は聞き返せば同じ答えを返してくれるものだ。

「お客さん、顔色が悪いよッ。ちゃんと栄養とってる?」

ん、向こうから積極的に話しかけてきている。何かがあるのかもしれない。俺は身構えた。

「今ならこの栄養ドリンクが安いよ。リアルゴールデン!1本定価150リアルリアルゴールデンが1ダースで1000リアルポッキリ!」

んなもんはいらん。・・・もっともHPを回復させる度合いによっては重宝するかもな。っっていうか俺の所持金500リアルじゃん。

「お客さん・・・。そのまま栄養とらないでいると、倒れるよ」

何の話だ、と思ったが、HPが35になっている。レベル2でマックスは75である。このゲームは装備品によってHPが増減するので装備を外すと55がマックスだ。確か病院を出た時は75あったはずだ。街をウロウロしている間に腹が減ってHPが減っていっているのだ。迷惑な機能つけやがって・・・。どうしようもないところまでいったら、病院を脱出したところからやり直せということか。まあ、俺もゲーム初心者じゃないからセーブデータは分けて記録する習慣はついている。病院脱出直後のデータに上書きするようなまねはしない。

「リックを知っていますか」

「ああ、こっちだよ。おいで」

聞いてみるものだ。俺はおっさんについていった。

「ほら、リュックだよ。これなんかオススメだねッ」

おっさんが手にしているものは、リュックサックだった。

「いや、これじゃなくて・・・」

といいたいところだが、ゲームなのでいちいちそんなコマンドは出ない。

「今なら、この指サックを付けておくよ。これで紙がめくりやすくなるよ」

んなもん付けられてもな。・・・もっとも貰えるものは貰っておくにこしたことはないが。値札を見ると、1200リアルとある。

今のままでは買えない。どうやら、よそで小銭稼ぎをするのが先のようだな。

「売る」というコマンドがあった。売れるものは・・・。ステテコパンツは履いているいるから売らないほうがいいし、デジカメもまだ使えそうだ。写真1~5ってなんだ?

見てみると、院長と女スパイのビビアンが激しくヤっている写真だ。よく撮れているのが5枚あるが、売れるのかな。

俺は試しに、それを売ってみることにした。

「あッ!お客さん、私が盗撮マニアだってことをどこで知ったんですかッ!」

手応えありか。

「ふーむ。ムヒョヒョゥ。よく撮れていますねえ。あッ、これなんかバッチリ映ってるゥ~。スゲェ~。お客さんたいした腕だねえ。ウシャシャー」

おっさんは、奇妙な笑いをまじえながら、食い入るように写真を見ている。

「よっしゃあー!ウキャキャキョ。5枚で1500リアルでどうですかなッ」

やった!これで所持金が2000リアルになる。俺はおっさんの気が変わらないうちに写真をうっぱらった。

「そのリュックが欲しいんだが、実は勧めてもらったリアルゴールデンも欲しいんだけどね。予算が2000リアルしかなくて」

「そういうことなら、今回は特別にサービスしちゃうよ。

リアルゴールデン1ダースと、リュックとサックで1800リアルに負けとくよ。200リアル電車賃にとっておきなッ」

俺はルンルン気分で店を後にした。首領キホーテか。いい店だ。

すぐ側に何かが落ちるような、鈍い音が聞こえたかと思うと

「キャーーーッ!」

耳をつんざくような悲鳴がした。

うわっ!俺は思わずダッシュしてその場から離れてしまった。

俺のすぐ近くに大きな肉の塊があって、通行人の女がそれを見て叫んだのだ。

しかしそれが、牛や豚の肉でないことは見ればすぐに分かった。頭部が潰れて元の原型はとどめていないが、服を着ている。人間だ。これは若い男だろう。

事件か、自殺か・・・。ここでしばらく待っていれば警察がくるだろう。

近くの人に話しかけてみた。30代くらいのサラリーマン風の男だ。

「最近多いんですよ。自殺が。何でも遺書には大抵、あり得ない妄想や絵空事がかかれていて、精神的に苦しんだあげくに自殺を選ぶ人が多いそうですよ。今月に入ってから、シプヤだけでも20件の飛び降り自殺と8件の電車への飛び込み自殺があったよ」

「今月?今は何月ですか?」

「は?何言ってるのあなた。今日は4月27日。今の時間は昼の11時」

すると、いきなり画面の右上に4月27日と表示された。時間はシステム画面で前から表示されていたが。

「シプヤって?」

「あんた大丈夫かい?この街がシプヤだよ。あんた電車でここまで来たんじゃないのかい」

「シプヤってどうやって漢字で書くんですか」

「シプヤはシプヤだよ。無理矢理漢字にする必要ないでしょう」

「間違いなく自殺なんですかね。殺人ということは?」

「テレビや新聞によると、警察は事件性は一切ないと言ってるそうなんだけどね。テレビでも話題になってるから知ってるとは思うけど、自殺した死体が消えることがあるそうなんだ。何者かが死体を持ち去ったという目撃証言も出ているんだよ」

男はその場を去っていった。

俺は死体のことを思い出して、振り向いた。すると、死体がなくなっていた。

あれ、警察が来た様子はないのに。

何者かが、大きな袋を背中にぶら下げて走り去っていくのが見えた。

ここは追うところだろうな。俺はダッシュボタンを押しながらそいつの後を追いかけた。

いくつものビルの隙間を通り抜け、当然坂という道に面した小さなビルに男は入っていった。ビルの名前は南チョモランマビル。5階建てだ。

エレベーターは3階で止まった。ヒューマン科学研究所と書いてある。

敵陣に乗り込む前に、HPを回復させておくか。今のHPは20だ。ずいぶん下がったものだ。

試しにリアルゴールデンを飲んでみるか。ゴクリ。

お、HPが75になって、全回復したぞ。さすが栄養ドリンク。

ドアの前で盗み聞きをした。

「約束の額と違うじゃねえか!」

「頭部が潰れて脳機能は全て使えないうえに、脊髄も傷ついてる。

5分の1の5万リアル出しただけでもありがたく思え」

「糞!これじゃ俺の取り分は1万にもならねえ!こんな仕事やってられるか」

「どうやら、ダメなモンスターと組まされたようだな。死体の損傷を少なくする

工夫すらできないとはな。もっとも、お前は逃げることはできないさ。5体は持ってこないとお前の命はない。まだ3体目だ。分かったら、とっとと次のガイシャを持ってきな」

「おい、マンチョ!マーモット博士に会わせてくれ!5万なんて納得いかねえよ!それに俺のボスの獨讀存美(ドクドクゾンビ)様が許してくれねえよ!」

「お前の都合なんて知ったこっちゃない。マーモット博士は忙しいんだ。お前に会ってる暇なんかない。とっとと帰れ」

「腐れマンチョが!」

「金田(キンタ)、まぁ待て。ほれ、領収書だ。存美とかいうお前のボスにちゃんと渡せよ。じゃあせいぜい殺されないように頑張れ」

金田と呼ばれた男が出てきた。俺はまた、こっそりとヤツの後を追った。上手くすればこいつのボスのところに行けるだろう。いきなりバトルは無理だろうが、情報収集が必要だ。

尾行は順調にいっていたと思っていたが、俺の思い違いだった。

人混みで信号待ちしていたら、ヤツがいつの間にか消えていて、俺の首筋に冷たいものがあてられていた。

「おまえ、誰だ。俺に何の用だ」

「まあ、待て。話せば分かる。お前、ヤツラに利用されているんだろ?俺はヤツラの情報を知りたいだけだ。お前の味方だよ」

「ふん、信用できるものか。まぁ一見人間のようだが・・・。その実お前も化け物かもしれんしな」

ということは、金田も人間のようだな。こいつをうまく利用する方法はないものか。

「とりあえず、お前の死体探しを手伝うよ」

「バカか、お前。金になると思って俺についてきたんだろうが、そんな甘い話じゃないんだよ。俺は訳あってモンスターに協力してるんだ。お前が協力するっていうんなら、お前もモンスターの下で働くことになるんだぞ」

「それはごめんだ。俺は金と情報が欲しいだけなんだ」

「なにが、だけだ。贅沢なヤツだな」

「とにかく、死体重いだろ?今度は俺があのビルまで運んでやるからさ」

すると、男の態度が少し変わった。

「そ、そうか。いや正直ヘトヘトなところでな。じゃあ頼むわ。とりあえず今はお前の存在は隠しておくことにしよう」

「ああ、そうしてくれると助かる」

男の携帯が鳴った。

「へい、今すぐ向かいやす。え、後10分で落とす?もう少し待って貰えないでしょうかね。・・・はぁ、へいすいません。全力で向かいやす」

男は携帯を閉じて、ため息をついた。

「リアリアン南急ホテルというビルまで10分で行くぞ。ついてこい」

どうやら話をしている時間はないようだ。俺はヤツの後ろを走った。

俺たちが着くと同時に、死体が落ちてきた。いや、生きている状態で落としたのかも知れないが、どちらにしても落ちた以上は即死のはずだ。

ビルが高いこともあって、頭部はまたもやグチャグチャ。脳漿や目玉がぶちまけられている。とてもリアルだ。こんなものをいい仕事をしていると褒める気にはならない。

「何してるんだ」

「え?」

「早く袋に入れろ!警察が来る前に!」

俺が入れるのか?俺は不快感を少しでも減らすために、指サックをはめた。

「全部だぞ。脳漿と目の玉も。特に目の玉は大事らしいぜ」

「うう・・・」

ポリゴンの自分とはいえ、操作していて気持ちのいいものではない。地面にしゃがみ込んで死体を触っている。脳漿を掻き集めて、目の玉を拾い上げて・・・。リアルにやるのもいい加減にしろ!まったく変なところにばかりこだわりやがって。

「袋をしょって、俺はよちよちと歩き出した」

「おい、もう少し早く歩けないのか?」

無茶を言うな。これが限界だ。それにHPの減りが早くなっているのも気になる。

なんとか、ヒューマン科学研究所についた時には時間は13時になっていた。

金田は金を手にしてビルから出てきた。

「糞う、また5万しか貰えなかった。本当に5体で解放されるのか?」

「金はいらん。その代わり飯をおごってくれ」


金田と俺は、パーマヤンというファミレスに入った。ザッと見たところウェイトレスはみんなパーマだった。俺はパーマスパゲティとコーヒーを頼んだ。金田は和風定食を頼んだ。

俺は先に出た金田の定食のみそ汁を勝手にすすりながら言った。

「なんで、モンスターに働かされているんだ?よかったら話してみそ?」

「・・・実は妹を人質にとられているんだ。あのいまいましい獨讀存美ヤロウに。でもあと1体で解放されるんだ。もう少し辛抱すれば妹は帰ってくる。もう一踏ん張りだ」

「保証なんてないだろう」

俺は遠慮なく言った。

「分かってるさ。でも相手はモンスターなんだ。戦って勝てる相手じゃない。俺は普通の人間だし、戦うなんてことはできない。・・・お前は何者なんだ。何も聞いてなかったが」

「名前はテツ。それだけだ」

「はあ?もう少し話せよ」

「実は記憶喪失なんだ。行くあても何もないし、生きる目的も何もない。今はただ小銭を稼いで、その日暮らしを目的としているだけさ」

「ふむ。お前に失うものが何もないというのなら・・・いや、やめておこう。お前も命は惜しいだろうし」

「いや、惜しくないよ」

「・・・え。そうなの?んじゃあ単刀直入にいうけど、獨讀存美というモンスターを倒してくれたら、俺の全財産の10%をやるよ」

「具体的な額を言ってもらわないとな」

「ああ。30万でどうだ」

「悪くはないな。だが、戦うための準備に金がかかるんだ。前金で10万貰えないか」


金田との会話が終わって、ファミレスを出たあたりで俺はもう寝るべき時間をとっくに過ぎていた。しかし、セーブの仕方が分からない。病院内で一度セーブしたが、あれはやられて気絶した時にセーブしますか?という表示が出たのだ。今はやられてもいないし、戦闘が始まる雰囲気でもない。

電源を付けたまま寝るのは心配だ。病院を出てからもう何時間もプレイしている。もしデータが消えたら痛い。

はてなダイアリーというのを知っているか?」

金田が別れ際に言った。

「その名のとおり日記だが、不思議な力を持っているらしい。見つければきっとお前の役に立つと思うぞ」

俺は金田から10万リアルを受け取って、別れた。仕方がない、ゲーム機の電源を点けっぱなしで寝よう。